よしなでnote

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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 

A Lollypop or A Bullet  桜庭一樹

 

「なぎさが撃ちたいのは実弾だろう?世の中にコミットする、直接的な力、実体のある力だ。だけどその子が撃っているのは、空想的弾丸だ」

 

二月の冬空の空気の中には、人々の孤独感や喪失感がとけこんでいるかのように、私たちを憂鬱へと誘う。でもその奥に、ぱっとざわめく春風の香りが未来へと導いてくれるような気がしますよね。この本は主に9月から10月へと時間が流れて行くのですが、私にとって2月から3月への移り変わりのように感じたので、この本をこの時期に書いておかなければならないと思いました。

ぜひ20代になるまでに読んでほしい本の一つだ。

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

 

 

内容

その日、兄と私は、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という"実弾"を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは徐々に親しくなっていく。だが藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日ーーー

 

以下ちょいと解説していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず冒頭から肝が冷えた。

新聞記事より抜粋

十月四日早朝朝、鳥取県境港市、蜷山の中腹で少女のバラバラの遺体が発見された。身元は市内に住む中学二年生、海野藻屑さん(十三)と判明した。藻屑さんは前日の夜から行方がわからなくなっていた。発見したのは同じ中学に通う友人、A子さん(十三)で、警察では犯人、犯行動機を調べるとともに、A子さんが遺体発見現場である蜷山に行った理由についても詳しく聞いている……。

 

 

 もう察した人も多いと思うが、読者には初めから結論が分かるような構成になっている。悲劇の物語で、なおかつミステリーのように藻屑の家族構成となぎさの人間関係が描かれる。ただ、この本をミステリー小説というよりも幻想小説というほうが良いように思う。特にリアリストであるなぎさの人間関係が、とても現実から遠のいているように表現されているからである。

 

 

子供特有の大人になりたがる甘酸っぱい理想と、ひたすら陰鬱に薄暗く続く現実の対比が、余計に私の心に突き刺してくる。ただただ、13歳の少女たちの何の抵抗もできないでいる、無言の悲痛。

 

 

それでも生き残った子供たちは張り裂けそうな悲しみを経験し、新たな道が切り開くようなカタルシスを体験する。この子供たちが大人になり、地獄を浄化しようとするのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

あなたのいない世界のどこかであなた以外の人間が死を経験している。そう珍しくない。 あなたが生きていれば大人になる。 私も、ある日大人になったとしても、世界の子供たちが必死になって、砂糖でできた弾丸で世界と戦っていることを記憶しておこう。

 

 

 

 

誰かの痛みや悲しみなんて、

みんなで分け合えたらいいのに。

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